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 血栓性静脈炎

血栓性静脈炎の概要は?
おもな症状
  罹患肢の疼痛
腫脹
足の腓腹部の圧痛
似ている病気
  急性動脈閉塞
急性リンパ管炎
急性蜂巣炎(きゅうせいほうそうえん)
起こりやすい合併症
  足踵部(そくしょうぶ・カカトのこと)の浮腫
うっ滞性色素沈着
皮膚炎
皮下硬結
静脈瘤
エコノミークラス症候群・肺血栓塞栓症・肺梗塞症
ショック状態

血栓性静脈炎ってどんな病気?
血栓性静脈炎と深部静脈血栓症
  イメージ画像 血栓性静脈炎は、静脈に起こる炎症です。通常は片側の下肢に発生します。静脈には血栓をともなうことが多く、静脈血栓が静脈炎の原因になることも多いため、静脈炎と静脈血栓症を区別することは厳密には不可能です。
 従来より症状や重症度に差があるため、静脈炎を起こした部位によって名称を区別しています。
 身体の表面の静脈である表在静脈系に起こった静脈炎を「血栓性静脈炎」と呼びます。普通は片側の下肢に腫れ・腫脹と疼痛が起こります。深部の静脈である深在静脈系に起こった静脈炎を「深部静脈血栓症」と呼びます。
異なる症状
   同じ静脈炎でも、血栓性静脈炎は軽症で済みます。
 深部静脈血栓症は重症化しやすく、エコノミークラス症候群・肺血栓塞栓症・肺梗塞症の原因となる怖い病気です。

血栓性静脈炎の原因は?
医原性損傷や静脈瘤炎
  イメージ画像 血栓性静脈炎は、カテーテルの留置などの医療校によって起こる静脈内膜の医原性損傷、静脈の拡張や静脈圧の上昇による内膜損傷によって起こる静脈瘤炎の後に起こることが多いです。
 長期臥床、手術、分娩、心疾患、脳疾患、肥満、脱水などの合併症として現れることもあります。長時間、身体を動かさない人に生じますが、普段は健康な成人でも、長時間の飛行機や自動車旅行などで座った姿勢をとり続けると血栓形成の原因になります。時々、身体を動かすことが予防には大切です。
 血液が固まりやすい体質を持った人にも、良くみられます。
さまざまな血栓性静脈炎
   ベーチェット病、バージャー病は、血栓性静脈炎を起こしやすく、膠原病、悪性腫瘍、凝固線溶系異常に合併することもあります。
 手足を中心に現れる再発性で、かつ移動性の静脈炎は、「遊走性静脈炎」と呼ばれます。腺ガンに合併しやすいとされています。
 女性の胸にみられる「亜急性皮下静脈炎」は、別名「モンドール病」とも呼ばれ、湿布だけで自然治癒します。
さまざまな深部静脈血栓
   深部静脈血栓では、右心不全、全身衰弱、手術後などに起こる循環障害で血栓ができなすくなり発症します。静脈中枢部を圧迫するような原因がある場合などにも、血栓ができやすくなり発症します。
 抗血栓蛋白であるプロテインCやプロテインSなどの先天的欠乏、プラスミノーゲンの欠乏による線溶系の低下など、体内の凝固線溶系の異常が原因になることもあります。
抗リン脂質抗体症候群
   膠原病の患者さんに多くみられる「抗リン脂質抗体症候群」による血栓症も注目されています。

血栓性静脈炎の症状は?
繰り返す場合は注意を
  イメージ画像 血栓性静脈炎を起こした場所には、索状の発赤と、痛みをともなう硬結が生じます。時には、発熱や悪寒などの全身症状が現れることもあります。
 下肢の皮膚表面に近い静脈に病気が起こった場合、静脈に沿って発赤としこりができます。深部の静脈血栓では下肢の後面、重症例では下肢全体に、歩行時の鈍痛、圧迫感が認められます。腫れがひどくなると、歩行困難になります。
 腎疾患、心疾患などに原因がある下肢の浮腫、腫脹は、両側にみられますが、血栓性静脈炎の大部分が片側のみに現れるのが特徴です。
 外傷やうっ血などの原因で起こることが多く、化膿性血栓性静脈炎を繰り返す場合、悪性腫瘍の合併に注意する必要があります。
急に現れる深部静脈血栓症
   うっ血が原因で起こる深部静脈血栓症では、急激に現れる浮腫が特徴です。数時間で進行し、浮腫性の腫れ・腫脹も引き続いて認められるようになります。
 微熱、心拍数の増加など、全身的な炎症症状が現れます。
深部静脈血栓症は急いで治療を
   うっ血が高度になると、皮膚や粘膜が紫色になるチアノーゼが現れます。強い痛みをともなうことがあり、すみやかな治療が求められます。
 急性期に適切な治療を行わないと、慢性期になり、浮腫、下肢の倦怠感、静脈瘤などの「静脈血栓後症候群」に悩まされることになります。

血栓性静脈炎の診断は?
急性期の検査
  イメージ画像 急性期の血栓性静脈炎は、下肢の腫れ、色調、皮膚温、表在静脈の拡張など、視診や触診で診断が可能です。
 血液検査では、血液凝固因子のひとつであるフィブリノゲンの増加がみられます。
 下肢の血栓のもっとも有効な検査法は、超音波ドプラー法で、現在、もっとも多く使用されている検査法です。傷みもなく、的確に診断できます。
 静脈造影を使って、血栓の局在や圧の上昇を測定することもあります。
慢性期の検査
   慢性期になると、皮膚や皮下組織が厚くなるリンパ浮腫との区別が難しくなります。リンパ管造影、静脈造影が必要になる場合もあります。

血栓性静脈炎の治療法は?
ほとんどが数週間で治癒
  イメージ画像 それぞれの病気の症状、時期によって治療法が異なります。
 血栓性静脈炎の急性期は、局所の安静と湿布、弾性包帯などを用いることで、数週間で治癒することがほとんどです。下肢を15度〜20度拳上し、上半身は水平にベッド上で安静にします。5日〜10日間は安静にし、以後は症状に応じて起立、座位、歩行と運動量を増やしていきます。
 完全に症状が消失するには、数ヶ月かかりますが、時には再発することもあります。
難治性や重症例
   難治性の場合、抗血小板薬、ワルファリンが必要になる場合もあります。
 感染や静脈瘤炎を合併している場合は、血栓の除去、静脈の切除が必要になる場合もあります。詰まった静脈に細い管状のカテーテルと呼ばれる器具を通し、血栓溶解薬を点滴して血栓を溶かす治療は、早いほど効果があります。
 炎症は深在静脈まで広がることがあり、エコノミークラス症候群・肺血栓塞栓症・肺梗塞症にも注意が必要です。下肢に生じた血栓性静脈炎では、放置しておくと足が壊死してしまうこともあるので、血栓を除去する手術を行うこともあります。
 最近では薬剤による内科的治療の成績が非常に優れているため、外科的に血栓を摘出する方法はほとんど行われていません。しかし血栓溶解療法が無効な場合、血栓除去術を外科的に行うこともあります。
深部静脈血栓症の治療
   深部静脈血栓症の急性期は、血栓の遊離によるエコノミークラス症候群・肺血栓塞栓症・肺梗塞症を予防するために、安静と下肢を高く上げておくことが必要になります。
 血栓予防のため、ヘパリン製剤の投与をただちに開始し、約1週間でワルファリンに切り替えます。
 下肢の血栓が明らかに認められ、エコノミークラス症候群・肺血栓塞栓症・肺梗塞症の原因となる可能性がある場合は、血栓が下肢から肺動脈に移動するのを防止するため、下大静脈にアンブレラというネット状の網線を挿入する方法があります。外科的切開を必要とせず、簡単に挿入できる利点があります。

血栓性静脈炎かなと思ったら?
安静にして医療機関へ受診を
  イメージ画像 血栓性静脈炎は、安静にしていれば治ることがほとんどです。
 しかし、下肢に急激な浮腫や痛みが現れた場合、エコノミークラス症候群・肺血栓塞栓症・肺梗塞症の危険性が高い深部静脈血栓症が疑われます。このような場合は、すぐに血管外科などの専門医、または内科医の診察を受ける必要があります。入院して治療を早期に受けることが、合併症や後遺症を残さずに治癒させるために重要です。
 病院に行く時は、できるだけ歩いて行かず、自動車の後部座席で下肢を伸ばして持ち上げた状態で行くのが良いでしょう。
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