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 精神療法とは?

精神療法とは?
心理的な働きかけ
  イメージ画像 精神療法とは、精神科や心療内科の領域の病気に、職業的専門家がさまざまな手段で心理的な働きかけを行うことを指します。
 どのような手段を行うかは、病気の種類、状態、患者さんの側の適正、治療者の考え方、病院の体制によって異なります。信頼のできる専門家に相談するようにしましょう。
個人精神療法と集団精神療法
   精神療法は、対象となる患者さんが1人であるか、複数であるかによって、個人精神療法と、集団精神療法とに分類することができます。

個人精神療法とは?
日本でもっとも一般的
  イメージ画像 日本で行われる精神療法は、個人精神療法の形をとることが多く、患者さんと治療者との1対1の人間関係を基礎とした、もっとも基本的な治療法です。
 患者さんは治療者によって支持的な慰め、自分が生きていくに値する人間であるという保証などを受けながら、自分の病気の原因や状態を理解し、洞察を進めていきます。
 その過程で、感情が発散され、浄化作用(カタルシス)が起こります。そして最終的には、人格の構造の変化が治療目標となります。これはすべての精神療法の基本となるものです。

集団精神療法とは?
複数の患者さんと行う
   集団場面で行う精神療法のことです。
 患者さんと治療者という人間関係の他にも、患者さん同士での相互作用が治療に深く関わってきます。他の患者さんと共感し合う体験を持つことで、精神的成長が期待できます。
人格障害や依存症など
   さまざまな精神障害を対象に病院内で行ったり、パーソナリティ障害薬物依存症アルコール依存症の患者グループで行ったりします。
 サイコドラマや、作業療法なども、集団精神療法のひとつになります。



家族療法とは?
家族の機能不全
   精神的な症状や問題行動は、患者さん本人のみに原因があるわけではなく、家族というシステムになんらかの機能不全があるためだという理論を背景にしています。
 治療の対象となるのは、患者さんと、その家族です。
 家族がどのようなコミュニケーションを持っているかを認識し、それを変化させることによって問題解決を目指します。
 家族全員と治療者が面談したり、患者さんに付き添ってきた家族に治療者が助言や指示を与えたりします。

精神分析療法とは?
フロイトによる治療法
   S.フロイトの精神分析理論を基礎にした治療法です。
 フロイトは、人間にはまだ意識化されていないさまざまな感情や欲求が無意識の領域にあると考え、ここにある心の葛藤や傷を意識化していくことで症状が消失していくことを明らかにしました。
現在・過去の感情を掘り下げていく
   患者さんはこの治療法の中で、現在・過去の体験や感情について、自由に連想していくことを求められます。その過程で、自分が触れられたくない部分で連想に行き詰ったり、治療者との間で自分の親との関係を再現したりします。
 このような経験を重ねながら、治療者とともに洞察を進めていきます。
 不安障害パーソナリティ障害などがおもな対象となります。

森田療法とは?
あるがまま療法
  イメージ画像 日本人の精神科医、森田正馬(もりたまさたけ)によって創出された治療法です。「あるがまま療法」とも呼ばれています。
 心の葛藤に無理に立ち向かおうとはせず、「あるがまま」を受け入れることで、禅の悟りに近い心境を獲得するとも言われています。
 人間の自然治癒力・状態心理の発動化を促す方向で治療は進められます。
絶対臥床から社会復帰へ
   入院してからしばらくは、絶対臥床(ぜったいがしょう)が命じられ、一切の外界との接触、娯楽は禁止されます。何もしてはいけないわけなので、心の葛藤や自分自身と直面せざるを得ない状態となります。この時の不安をあるがままに受け入れ、本来人間が持っている活動欲求が出現してきます。
 軽作業期、重作業期、社会復帰準備期を経て、あるがままの自分を受け入れ、感情のとらわれから自分自身を解放することができるようになります。
 原則として40日〜60日の入院を必要としますが、外来治療で行われることもあります。
 不安障害心気障害強迫性障害などがおもな対象となります。また、ガン末期の「生きがい療法」にも応用されています。

催眠療法とは?
催眠現象を使う
  イメージ画像 催眠現象を利用した心理的治療法で、古くはギリシャ時代に起源があります。
 催眠術などと混同され、偏見や誤解を受けやすいのですが、きちんとした専門家の元で行われる催眠療法は、心理生理学的な科学的治療法です。
暗示を与えたり、感情を表現させる
   人間は催眠の状態に入ると、心身が特異なトランスという状態になり、被暗示性が亢進します。これを利用して、心身の緊張・不安を取り除くような暗示を与えたり、抑圧されていた感情を表現させたりします。
 心身症、不安障害、身体表現性障害、転換性障害などに有効とされています。また、歯科領域では抜歯の際に、産婦人科領域では無痛分娩に、催眠療法が用いられることがあります。

行動療法とは?
行動が治療になる
  イメージ画像 恐怖症や心身症などの困った症状は、行動について誤った学習がなされたか、いまだ正しい学習がなされていない結果であると考える学習理論を背景としています。
 精神分析療法などのように心理的な面には立ち入らず、行動自体が治療の対象となります。
不安や恐怖に慣れさせる
   代表的な方法は、不安や恐怖の対象に慣れさせる、系統的脱感作療法(けいとうてきだつかんさりょうほう)と呼ばれるものです。
 高血圧や偏頭痛などの心身症では、血圧や皮膚温を測定してフィードバック(事故調節)し、反応のコントロールを体得するバイオフィードバック法があります。
 恐怖症、強迫性障害、心身症などの症状、不登校、遺尿症(いにょうしょう)などの問題行動などに用いられます。

認知行動療法とは?
認知フィルターの歪み
  イメージ画像 人間は、自分の周囲の世界をどうとらえ、構造づけるかという認知フィルターを持っています。
 そのフィルターが理論的に矛盾していないものであれば、健康的に過ごすことができますが、ゆがんでいる場合、否定的な感情が自動的に沸いてきて、行動の面においても支障を生じるようになります。
認知フィルターの歪みの修整
   A.T.ベックは、うつ病の患者さんは幼児期から形成された否定的自動思考を持っており、それによってうつ病が引き起こされると考えました。例えば、「完全な業績を上げなければ人には好かれない」という信念(belief)を持っていると、何か仕事でつまづいた時、「なんて役立たずな人間なんだろう」、「何をやってもダメなんだ」、「これからも人に好かれるわけはない」といった解釈となり、結果としてうつ病を発症してしまうことになります。
 認知行動療法では、そのような信念を持つにいたった原因を問題にするのではなく、その認知の歪みを修整し、それによって感情や行動を変えていくことを目的としています。「すべて完璧な仕事をできる人など存在しないし、失敗してもそれですべての人に嫌われることなどあり得ない」という、合理的な信念に自分で書き換えることができれば良いわけです。
 認知行動療法は、構造化されたセッションで目的を現在の適応に絞るので、従来のカウンセリング主体の精神療法より、短期間に終結させることが可能です。患者さんは、治療者と共同して認知の歪みを探し、宿題として「どのような状況で困った行動が起こるのか」、「その時にどのような感情を持つのか」、「これまでとは違った対処方法をとった時の効果」など、自分を客観的に観察し、記録し、報告し、ロールプレイなどの実践的な練習を積んで行きます。
感情障害や不安障害など
   感情障害、不安障害強迫性障害などを中心に、身体表現性障害、摂食障害などの不適応行動などが対象となります。

自律訓練法とは?
リラクゼーション法としても普及
  イメージ画像 自己統制(セルフコントロール)を目的とし、自己暗示を利用した身体調整法です。
 身体の部位に注意を集中し、心身の状態をコントロールする感覚を反復練習して身に付けていきます。1日3回、2分〜5分で練習でき、比較的場所を選ばないことから、一般のリラクゼーション法としても普及し、自己学習用の書物・ビデオも市販されています。
 心身症、不安障害、子供の情緒不安定に関する問題、緊張緩和、疲労回復などに有効です。

サイコドラマ(心理劇)とは?
劇を演じる集団精神療法
   数人の患者さんが自由に劇を演じる集団精神療法です。
 劇の中で主演者、補助自我、観客などさまざまな役割を演じていくことで、自分の問題点に気付く自己洞察や、感情表出によるカタルシスを得ていきます。
 治療者は監督としてテーマを与えますが、劇はメンバーの自由な意思を尊重して進行します。したがって、自発性を高める訓練としても有効といえます。
 精神科の臨床では、おもに不安障害などの患者さんを対象に、8人〜12人を1グループとして行われる精神療法です。

作業療法とは?
統合失調症の長期入院患者など
  イメージ画像 手工芸、木工、園芸作業、レクリエーションなど、身体を使う活動によって、生産的で社会的な活動に携わろうという意欲を回復させていく集団療法です。
 おもに統合失調症の長期入院者などを対象とし、作業療法士が中心となって行います。また、デイケアのプログラムとしても行われています。日常的な生活動作、身支度や移動、他者との会話訓練など、料理、園芸、手芸、スポーツなどのプログラムとしても行われます。
 技能の向上といったことよりも、自発性や現実検討力を増進させること、社会的な役割について自覚を促すことなどに主眼が置かれます。

遊戯療法とは?
子供のための精神療法
  イメージ画像 言語で自分を表現することが難しく、成人と同じ方法では治療意欲に欠けがちな子供の精神療法として考えられたものです。
 ごく普通に子供たちが行っている、人形、楽器、スポーツ、ゲームなどの遊びをコミュニケーションの手段として用います。子供は自分を見守る治療者との人間関係の中で、保護された時間と空間を経験し、自己表現ができるようになります。子供は遊びの中に、意識的・無意識的な問題点の手掛かりを表出するものです。
 個人精神療法として行う場合もありますし、グループで行うこともあります。

絵画療法とは?
芸術療法
  イメージ画像 創作活動によって言語では表現されない心理面を投影させ、患者さんの創造性や自発性を高めていく精神療法を芸術療法と言います。
 絵画を用いた絵画療法は、芸術療法の一分野です。
絵画を通して感情を解放
   患者さんは絵画のイメージを通して、無意識の中に閉じ込めてしまっていた感情を解放していきます。
 そしてそこに投影された自己の内面を客観的に眺め、問題点を洞察していきます。また、患者さんと治療者との間で描かれた絵画を話題にして、感情的な交流を深めるためにも使われます。
 個人療法として行われることもありますし、集団で行うこともあります。
いくつかの手法
   題材は患者さんの描きたいものを選ぶ場合と、課題を決める場合があります。
 良く用いられるのは、実のついた1本の木を描くバウムテスト、家・木・人を描くHTP法、山や川などの要素を描き込んでいく風景構成法、家族メンバーを描く家族絵画療法などがあります。
適応範囲の広い精神療法
   うつ病不安障害、心因性の反応、心身症から問題行動まで、適応範囲の広い精神療法です。
 芸術療法には他にも、粘土造形、詩、写真、俳句・連句なども用いられます。

箱庭療法とは?
遊戯療法と芸術療法
   患者さんが、砂の入った箱の中にさまざまな玩具を並べ、ひとつの「世界」を構成することによって、治療を進めていく方法です。
 遊戯療法でもあり、芸術療法でもあります。
箱庭作り
   玩具は、人、動物、植物、乗り物、建築物、柵、石、怪獣などのミニチュアです。
 患者さんは好きな玩具を選択し、それらを砂の上に配置していきますが、そこには患者さんの内界が表現されています。治療者は、表現された世界に統合性があるかどうか、空間配置がどのようになされているか、テーマは何か、どのような象徴的意味があるかを解釈し、治療の助けにしていきます。解釈には普通、C.G.ユンクの分析心理学が用いられます。
 患者さんにとっては、表現すること自体が癒しの意味を持ちます。幼い頃に遊んだ砂に触れることで、原始的な感覚を思い出し、心理的に発達段階が元に戻る退行という現象を起こすと考えられています。
おもに子供が対象
   子供のチック、遺尿症、場面緘黙(ばめんかんもく)などの治療に用いられます。成人の治療に用いられることもあります。

セルフヘルプ・グループとは?
アメリカのアルコール依存症が起源
  イメージ画像 他の精神療法では、専門家である治療者が患者さんに援助をするという関係ですが、セルフヘルプ・グループは同じ悩みを抱える人間同士が援助し合うことによって、それ自体が治療効果を持つという「援助者療法原理」に基づいた自助グループの活動を指します。
 アメリカで始まったアルコール依存症者匿名協会に起源を持ちます。アメリカの映画やドラマで、目にする機会が多いと思います。日本国内では、「断酒会(AA)」という独自の活動で発展してきました。
 月に数回、会員が集まり、飲酒と断酒に関する体験発表を行ったり、アルコールの問題に悩んでいる当事者、家族の相談活動を行っています。
 現在では、アルコール依存症のほかにも、不登校、摂食障害引きこもりなどの問題を抱える当事者、精神障害を持つ人やその家族など、さまざまなグループが活動しています。
対等な関係で問題を語り合う
   一方的に援助されるのではなく、対等な関係の中で体験を語り合ったり、情報を交換したり、自分たちの問題に関して社会にさまざまな情報を発信し、誤解や偏見を解いていこうとするケースもあります。
 お互いに援助し合うことによって、ありのままの自分を受容された感覚、グループの中に自分の役割を見出す感覚を味わい、自分の能力を再発見するなど、さまざまな機能を持っていると考えられます。
 最終的には参加者が、自分の人生を主体的に歩んでいく力を身に付けることが目標になります。

無痙攣通電療法とは?
電気痙攣療法
  イメージ画像 頭部の皮膚から脳に通電し、痙攣を起こすことで精神症状の改善をはかる身体的治療で、電気痙攣療法(でんきけいれんりょうほう)と言います。
 電気痙攣療法は、気分障害、統合失調症に効果があったため、近年の薬物療法が登場するまでは、精神科における主要な治療法でした。
自殺念慮の強い患者さん
   一方で、無痙攣通電療法(むけいれんつうでんりょうほう)も開発され、以前のように全身痙攣によって患者さんに恐怖感を与えることはなくなりました。
 薬物療法が主流となった現在でも、希志念慮・自殺願望の強いうつ病統合失調症の緊張病型の昏迷、転換性障害の症状に有効性が認められ、引き続き身体的治療として用いられています。
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