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 卵巣腫瘍・卵巣ガン

卵巣腫瘍・卵巣ガンの概要は?
おもな症状
  腹部膨満感(ふくぶぼうまんかん)
下腹部痛
腰痛
月経痛
月経周期異常
性器出血
似ている病気
  妊娠子宮(にんしんしきゅう)
虫垂炎
子宮外妊娠(しきゅうがいにんしん)
子宮筋腫
腹水(ふくすい)
その他の腹腔内のガン
起こりやすい合併症
  茎捻転(けいねんてん)
破裂
癒着(ゆちゃく)
化膿
出血
悪性変化

卵巣腫瘍・卵巣ガンってどんな病気?
卵管の腫れ
  イメージ画像 卵巣は子宮の左右両側にひとつずつあります。普通は直径2cm~3cmくらいの大きさです。
 卵巣と子宮をつなぐ役割をしているのが「卵管」です。この卵管に腫れが生じた状態を卵巣腫瘍といいます。
 多くの場合、卵巣の片側に発生しますが、両側に発生することもあります。
2つに分類
   卵巣腫瘍は、他の臓器に発症する腫瘍に比べて、とてもたくさんの種類が存在します。
 大きくふたつに分類すると、嚢胞性腫瘍(のうほうせいしゅよう)と呼ばれる卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)と、充実性腫瘍(じゅうじつせいしゅよう)に分類できます。
3群に分類
   卵巣腫瘍は臨床経過に応じて、良性、悪性、良性と悪性の中間的な境界悪性の3群に分類できます。
 一般的に、嚢胞性腫瘍は臨床経過としては良性のことが多く、充実性腫瘍は75%~80%で悪性か境界悪性腫瘍になります。

卵巣嚢腫・嚢胞性腫瘍ってどんな病気?
発生頻度の多い腫瘍
  イメージ画像 卵巣の中に液体成分がたまって、腫れている状態の腫瘍です。婦人科臓器に発生する腫瘍の中で、子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)と並んで、もっとも発生頻度の高い腫瘍のひとつです。
 ほとんどの場合が良性です。
 しかし、卵巣は腹腔内の臓器でおなかの中にあります。正確に検査をするためには、手術で摘出して、顕微鏡で腫瘍を構成する細胞が良性か悪性かを検査する病理検査を行わなければ、確実に良性であるとは断言することはできません。
漿液性嚢胞腺腫(しょうえきせいのうほうせんしゅ)
   嚢胞内部に黄色い透明な液体がたまる腫瘍です。
 卵巣嚢腫の約25%を占める病気です。
 球形の手の握りこぶしほどの大きさで、縮小しないことが特徴です。
粘液性嚢胞腺腫(ねんえきせいのうほうせんしゅ)
   嚢胞内部にネバネバとした粘液がたまる腫瘍です。
 卵巣嚢腫の約20%を占める病気です。
 しばしば巨大化し、おなかの中で嚢胞が破れて、内部の粘液がおなかの中で広がる特徴があります。この病態を腹膜偽粘液腫(ふくまくぎねんえきしゅ)と呼びます。腫瘍のひとつひとつの細胞は良性ですが、嚢胞が破れることで腹膜炎を起こし、死亡することも少なくありません。
成熟嚢胞性奇形腫(せいじゅくのうほうせいきけいしゅ)
   嚢胞内部に、皮脂、毛髪、歯、軟骨などを含んだ腫瘍です。大きさは直径10cm以下で、卵巣の両側に発生することもあります。良性の卵巣嚢腫の中でも、もっとも頻度が高く、その半数以上を占めます。
 ほとんど20代~30代で発症します。妊娠中に発見されることも多く、この場合は妊娠初期に手術を行います。嚢胞内部に、皮脂、毛髪などを含んでいるため、腹部エックス線検査で発見されることもあります。
 若い年代で発症した場合、良性のことが多いです。高齢の場合には、悪性に変化していることがあります。そのため、若い年代で成熟嚢胞性奇形腫が発見された場合は、手術による摘出か、定期的な検査を受けることがすすめられます。

充実性腫瘍ってどんな病気?
2つのタイプ
  イメージ画像 充実性腫瘍には、腫瘍全体が充実成分と呼ばれる固形成分で占められている腫瘍と、腫瘍の一部に充実成分があり、それ以外の部分は液体成分が占めているものの、2つのタイプがあります。
悪性の可能性が高い
   充実性腫瘍には、良性のものと、悪性の卵巣ガンがあります。卵巣嚢腫のほとんどが良性であるのに対して、充実性腫瘍では悪性の割合が高くなります。
 良性の腫瘍と悪性の卵巣ガンのちょうど中間の性質を持つ境界悪性では、確実に摘出してしまえば生命に関わることはありません。しかし、ごくまれに再発することがあります。
卵巣ガン
   卵巣ガンは初期の場合なら、完治率も改善傾向にあります。しかし進行した場合の再発率は高く、治療が難しくなります。
 卵巣ガンの特徴として、おなかに水がたまる腹水と、それによる腹膜播種という転移形態をとることも、治療を難しくしている原因のひとつです。
 進行期にもよりますが、卵巣ガンの生命予後は厳しいとされています。最近では生活様式や食生活の欧米化によって、卵巣ガンは増加傾向にあります。

卵巣腫瘍・卵巣ガンの原因は?
さまざまな原因
  イメージ画像 卵巣腫瘍には、非常に多くの種類があります。その結果、発生原因も多岐に渡ります。
成熟嚢胞性奇形腫(せいじゅくのうほうせいきけいしゅ)
   良性の卵巣腫瘍の中で、もっとも発生頻度の高い成熟嚢胞性奇形腫の原因は、胚細胞腫瘍(はいさいぼうしゅよう)とも呼ばれます。胎児が発生する段階の細胞が、卵巣の内部で腫瘍を形成したものです。
子宮内膜症性卵巣嚢腫(しきゅうないまくしょうせいらんそうのうしゅ)
   子宮内膜症性卵巣嚢腫の原因は、卵巣の内部で子宮内膜が増殖し、月経周期に一致して出血を繰り返し、卵巣の中に月経血が毎月たまることで発生します。
卵巣ガン
   悪性の卵巣腫瘍の卵巣ガンは、ヒトの体をガンから守る働きをする物質を作るための鋳型であるガン抑制遺伝子の異常によって発生すると考えられています。
 ガン抑制遺伝子の異常が原因で発症するガンには、乳ガン、大腸ガンなどもあります。身内にこれらのガンにかかった人がいる場合は、卵巣ガンのリスクが高くなり、家族性卵巣ガン、乳ガンなどの家系があることも知られています。

卵巣腫瘍・卵巣ガンの症状は?
自覚症状が少ない
  イメージ画像 卵巣腫瘍の代表的な症状は、腹部膨満感(ふくぶぼうまんかん)、下腹部痛、性器出血、便秘、頻尿(ひんにょう)など、さまざまです。
 一般的にもっとも多く現われる初発症状は、下腹部のどちらか片方の腹痛です。さらに腫瘍が大きくなると、ウエストサイズが大きくなり、スカートやジーンズがきつくなったりすることがあります。
 もしいずれかの自覚症状があれば、婦人科を受診しましょう。
発見が遅れることが多い
   卵巣腫瘍は、サイズがかなり大きくなってからでないと、腹部膨満感などの症状が現われにくい病気で、発見が遅れがちになってしまいます。
 卵巣は腹腔内の臓器で、子宮筋腫の際のレバー状の塊が生理のときに出る過多月経、子宮頸ガンの際の不正性器出血・性交後出血、子宮内膜ガンの際の不正性器出血などの特徴的自覚症状がないので、卵巣腫瘍の早期発見を遅らせる一因となっています。
卵巣腫瘍茎捻転
   片側に発生した卵巣腫瘍の場合、急速に下腹部痛が現われてくることがあります。これを卵巣腫瘍茎捻転(らんそうしゅようけいねんてん)と呼びます。
 卵巣腫瘍がおなかの中でねじれてしまい、その腫瘍に卵巣を養うために送られていた血液が来なくなって、腫瘍が壊死に陥り、炎症などが強くなって、周期的で強烈な痛みが現われます。このような卵巣腫瘍茎捻転を起こす腫瘍は、直径が5cm以上のものが多いです。
腹水・胸水
   通常では卵巣ガンにともなってみられる腹水・胸水が、良性の卵巣腫瘍にともなって出現することがあります。メイグス症候群と呼ばれ、手術で卵巣腫瘍を摘出すると、急速に腹水・胸水が消失します。
 卵巣ガンによる腹水・胸水は、悪性細胞が原因になっているため、そのコントロールに苦慮することが多いです。
 たまった腹水の中を悪性細胞が流れていって、腹膜などに二次的な病変を作る腹膜播種(ふくまくはしゅ)は、卵巣ガンの進行様式の特徴です。
ホルモンの分泌
   良性の充実腫瘍は、まれにホルモンを生成することがあります。
 この場合は、分泌されるホルモンによって、閉経後の再出血、多毛、筋力発達、男性化徴候などが起こることがあります。

卵巣腫瘍・卵巣ガンの診断は?
経膣超音波検査
  イメージ画像 卵巣嚢胞、卵巣ガンの診断にもっとも有効なのは、経膣超音波検査(けいちつちょうおんぱけんさ)です。膣の中に超音波プローブという細い管を挿入して卵巣を観察します。
 通常の下腹部をおなかの表面から超音波で観察する経腹超音波検査(けいふくちょうおんぱけんさ)に比べ、卵巣を近いところから詳しく観察できる利点があります。そのため、小さな腫瘍を早期に発見するために不可欠な検査です。
 しかし、卵巣嚢胞が直径15cmを超えるほと大きなものや、腹水の貯留や腹膜の播種をともなう卵巣ガンでは、経腹超音波検査の方が有効な場合もあります。
画像診断
   画像診断としては、卵巣腫瘍の種類を特定するために、CT検査や、MRI検査が有効です。
腫瘍マーカー
   卵巣腫瘍が良性か悪性かを判断するひとつの目安として、腫瘍マーカーが使用されます。
 正確に良性か悪性かを判断するためには、手術によって摘出し、顕微鏡で腫瘍細胞を検査する病理検査を行います。

腫瘍マーカーとは?
腫瘍から出る特異な物質
  イメージ画像 腫瘍マーカーとは通常、腫瘍ができるとその表面に特異的に発現してくる物質で、腫瘍の大きさ、広がりに応じて、血液中にその物質がたくさん流入してきます。
 腫瘍マーカーは、腫瘍の発生している臓器と強い特異性があるため、血液検査で高値を示すようなら、その臓器に腫瘍があることが推測されます。
さまざまな腫瘍マーカー
   婦人科の腫瘍で特に特異性があるものに、CA125があります。この腫瘍マーカーは卵巣腫瘍、とくに卵巣ガンの場合に高値を示します。ただし他の腫瘍マーカーでも同様ですが、子宮内膜症などの他の病気でも高値を示すことがあるため、CA125の検査値が上がったからといって、すぐに卵巣ガンだと診断することはできません。
 CA19-9は、婦人科以外の腫瘍でも高値を示すことが知られていますが、婦人科腫瘍では卵巣腫瘍、とくに成熟嚢胞性奇形腫で高値を示すことがあります。
 卵巣ガンは、いわゆる腺ガンであることが多いのですが、扁平上皮ガンが多い子宮頸ガンでは、SCCという腫瘍マーカーがよく高値になります。
 胎盤から分泌されるhCGという腫瘍マーカーは、胞状奇胎(ほうじょうきたい)、絨毛ガンなどで高値を示します。
腫瘍マーカーで確定診断にはなりません
   これらの腫瘍マーカーは、一般的に病気の病状に従って増減します。しかし診断上の意義は、画像診断などを含めた検査の一部に過ぎないことを頭に入れておくことが大切です。

卵巣腫瘍・卵巣ガンの治療法は?
卵巣嚢腫
  イメージ画像 良性の卵巣嚢腫が疑われ、その腫瘍の大きさが直径10cm以内ならば、腹腔鏡下腫瘍摘出術(ふくくうきょうかしゅようてきしゅつじゅつ)が可能です。
 腫瘍の大きさが直径10cm以上の場合や、画像診断で悪性が疑われる場合には、開腹による腫瘍切除が必要となります。
卵巣ガン
   卵巣ガンの治療法は、子宮の摘出、大網(だいもう)と呼ばれる胃と大腸の間の膜の切除、腹膜播種病変の切除、リンパ腺を摘出して転移の有無を検査するリンパ腺の郭清(かくせい)を初回手術として行います。手術後、1週間~2週間から、抗ガン薬を用いた化学療法を行います。
 卵巣ガンは、白血病などを除いた1ヶ所に固まって発生する固形ガンの中では、抗ガン薬に良く反応する悪性腫瘍です。手術後に化学療法を行うことで、治療効果が改善することが知られています。
 また近年では新しい抗ガン薬の研究開発が行われており、高い効果を保ちながら、副作用を抑える薬が開発されてきています。

卵巣腫瘍・卵巣ガンかなと思ったら?
早期発見が難しい
  イメージ画像 卵巣腫瘍が他の婦人科腫瘍と大きく異なるところは、特徴的な初発症状に乏しいことです。
 早期発見が完全な治療を受けるために必要ですが、症状が現われにくく、大量の腹水がたまってから、あわてて婦人科を受診するというケースが多いです。
気軽に婦人科へ
   もし、なんらかの下腹部痛、不正出血、おりものの増加、腹部膨満感など、普段とは違う症状を感じた場合には、卵巣腫瘍を頭の中に入れて、早期に婦人科を受診しましょう。早期に適切な検査を受けることが大切です。
 とくに下腹部に膨満感があり、ウエストサイズが大きくなった場合は、ただ太っただけとすませずに、婦人科を受診するようにしましょう。
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