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無症状なら経過観察
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重症の僧帽弁逆流があったとしても、無症状で、左心室の機能も正常なら、半年~1年に1回の心エコー検査による経過観察を行います。
逆流が中等度までの場合、食事療法、水分制限、薬物療法などの内科的治療を行います。左心不全症状があれば、利尿薬やジギタリス製剤を使用します。
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薬剤によるさまざまな治療法
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近年、長期予後改善のためにアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE)を併用する場合もあります。
心房細動(しんぼうさいどう)の合併があれば、僧帽弁狭窄症(そうぼうべんきょうさくしょう)と同様に抗不整脈薬と抗凝固薬を使った抗凝固療法を行います。抗凝固薬は、ワルファリンカリウムが通常使われ、血液が心臓内で固まるのを防ぎます。薬が効きすぎると、怪我をした時に血が止まらなくなるため、服用中は定期的な血液検査を受ける必要があります。治療中に歯科治療(特に抜歯)を受ける場合は注意が必要になるなど、気を付けなければならないことが多くあります。しかしこの治療を受けないと、脳梗塞や腎梗塞、急性動脈閉塞 のように足の動脈が急に閉塞して切断を余儀なくされるなどの危険が高く、治療が重い合併症を予防することに繋がります。
僧帽弁閉鎖不全症の場合には、感染性内膜炎の予防のために抗生剤の服用が必要になることもあります。
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手術
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内科的薬物治療を行っても心不全症状 が続く場合、左心室の機能が低下してきた場合、外科手術が必要になります。
通常、外科手術には、人工弁への弁置換術が行われます。病状によっては本来の僧帽弁を温存し、狭窄を広げるカテーテルによる交連切開術(こうれんせっかいじゅつ・PTMC)が行われることもあります。持続的な弁の機能維持は困難であることが多く、複数回の手術が必要になることもまれではありません。
手術には最適な時期があるため、循環器科の専門医の指示に従うようにしましょう。
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心房細動を同時に治療
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心房細動を治療するメイズ手術を、弁膜症手術の際に併用すれば、心房細動の治療も同時に行うことができます。メイズ手術は術後の心房細動を防ぐ目的で行われることが多く、コックス法、迷路手術とも呼ばれます。
心房を迷路状に切開して縫合することで、心房細動によって起こった心臓を収縮させる電気信号の乱れを遮断することができます。切開する代わりに、凍結凝固する方法もあります。メイズ手術は大掛かりな手術で、完全房室ブロックを合併することもあるため、手術法の選択には十分な検討が必要です。
交連切開術も行われるようになってきました。この方法で優れた結果が得られる症例は限られますが、身体への負担が少ないと言う利点があります。しかし、再発したり、逆流が増えて、緊急に手術をしなければいけないようなこともあります。
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手術後も治療は継続
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弁置換術を行っても人工弁が血栓によって機能障害を起こしたり、重い血栓塞栓症の合併症を起こしたりするのを防ぐために、必ず抗凝固療法は継続する必要があります。
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